ファッションセラピーとは? 心理カウンセリング×ファッションで生まれる新しいアプローチ

見た目だけでなく心にも効く、ファッションの力

「服装は第一印象を左右する」というのはよく知られたこと。今世の中にあるパーソナルスタイリングやイメージコンサルタントなどのサービスは、そういったファッションが見た目に及ぼす影響に関わるものばかりです。

しかし、ファッションの力はそれだけにとどまりません。私たちが身につける服は、自信や心理状態にも大きな影響を与えます。

お気に入りの服を着ると気分が上がり、自信を持って一日を過ごせた……。そんな経験、きっとあなたにもあるのではないでしょうか。逆に、自分に似合わない服や、TPOに合っていない服装をしていると、どこか落ち着かず、本来の力を発揮できないことも。

このように、ファッションは単なる見た目の問題ではなく、私たちの内面と密接に結びついているんです。

心理カウンセラーとパーソナルスタイリストという2つのキャリアを持つ私が2017年からスタートし、ますます近年注目され、様々な取材や企業講演の依頼も頂いているのが、まさにこうした心理的アプローチとファッションを融合させたファッションセラピーです。

このアプローチは、従来のパーソナルスタイリング・イメージコンサルティングに心理カウンセリングの要素を取り入れ、クライアントの外見と内面の両方に働きかけることで、より深い変容と成長を促します。

だから本当に奥深く、面白い!もう20年近くこの仕事をやっている私が、自信を持って一生できる、やりたい!と思える仕事。クライアントさんの成長を手伝いながら自分自身も成長できる希有な仕事です。

そんな、「ファッションセラピー」。ファッション分野と心理学分野の両方の知識が必要となる仕事なので、現状体系的に学べるのはここ、FPSSだけです。
その中身について、この記事で詳しく解説していきます。

 

ファッションセラピーとは何か?

ファッションセラピーとは、ファッションと心理学を組み合わせた新しいアプローチです。

このセラピーでは、クライアントの服装や外見だけでなく、その背後にある心理状態や自己認識にもアプローチします。従来のパーソナルスタイリングやイメージコンサルティングが主に外見の改善に焦点を当てていたのに対し、ファッションセラピーは内面の変化を促すことで、もっと持続的に、そして根っこからクライアントが変わるのをサポートしていきます。

例えば、今流行している、いわゆる「イメコン」では、クライアントの体型や肌の色に合わせた服選びや、目的に応じたスタイリングアドバイスが中心です。

一方、ファッションセラピーでは、なぜクライアントが特定の服装を好むのかあるいは苦手に思うのか。そして、どのようなセルフイメージを持っているのかを深く掘り下げます。そして、ファッションを通じて自己表現や自己受容を促し、心理的な課題の解決にもアプローチしていきます。

つまりファッションセラピーでは、クライアントの内面を理解するのにカウンセリングの技法を使い、クライアントの変化を促すのにファッションを使う、ということです。

例えば、自分に自信が持てないクライアントに対して、その原因を探りつつ、自信を引き出すようなスタイリングを提案することで、内面と外見の両面からサポートを行います。
そのため、どちらか片方だけでは出せない効果が実現しますし、クライアントさんも皆さんおしゃれを楽しみながら取り組むことができるんです。

 

ファッションセラピーの心理学的な背景

ファッションセラピーの効果は、心理学の理論に裏付けられています。

その中心となるのが「enclothed cognition」という概念です。日本語での文献がまだまだ少ないのですが、現在のところ「着衣認知理論」と訳している文献が多いです。ただ、ちょっとこの言葉じゃ意味が伝わりづらいですよね…。簡単に言うと、「着ている服が私たちの心理状態や行動に影響を与える」という理論です。

例えば、スーツを着ることで専門性や自信が高まったり、スポーツウェアを着ることでよりアクティブになったりする現象が、この理論で説明できます。

また、色彩心理学もファッションセラピーに重要な役割を果たします。色彩が人の心理や感情に与える影響は古くから研究されており、ファッションにおいても同様の効果が期待できます。
例えば、赤い服を着ることで自信や情熱が高まったり、青い服で落ち着きや集中力が増したり……。
ファッションセラピーでは、これらの効果を意識的に活用し、クライアントの心理状態や目標に合わせた色彩選択を行います。

さらに、ボディイメージと自己肯定感の関係性も重要です。多くの人が自分の体型や外見に不満を感じていますが、これは単なる見た目の問題ではなく、自己肯定感や自信の低下につながることがあります。

ファッションセラピーでは、クライアントが自分の体を肯定的に捉え、その個性を生かしたスタイリングを提案することで、ボディイメージの改善と自己肯定感の向上を同時に図ります。これは単に「体型に似合う服を選ぶ」ということではありません。今の自分の体型を正確に理解し、それを受け入れられるようになること。それは、自分自身を受け入れることにも繋がります。そういう状態を、心理カウンセリングの技法を使って目指していくんです。

このように、ファッションセラピーは科学的な基盤に基づいた実践的なアプローチであり、クライアントの内面と外見の両方に働きかけることで、より深い変容と成長を促すことができるのです。

 

ファッションセラピーはどうやってやるの?

ファッションセラピーでは、クライアントの内面と外見の両方にアプローチする手法を複数使い、進めていきます。

まず、クライアントの内面を理解するためのカウンセリング技法が重要です。傾聴や共感的理解、オープンクエスチョンなどの技法を用いて、クライアントの価値観、セルフイメージ、悩みなどを深く探ります。

カウンセリングだけではクライアントの本質や悩みの核の部分にたどり着くのに時間がかかりがちなので、服装心理診断も同時に活用します。

これを事前に行い、その結果を読み解きながら話を聴いていくことで、クライアントの考え方の癖やその原因に早く辿り着けるようになり、よりスムーズで深いカウンセリングが叶います。

次に、パーソナルカラー診断を行います。ただ、ファッションセラピーにおけるパーソナルカラー診断は単に似合う色を見つけるだけではありません。色彩が与える心理的効果も考慮しながら最善の色を提案します。

例えば、自信を高めたいクライアントには、エネルギッシュで力強い印象を与える色を提案する必要があります。もしその色が外見的に最も似合う色でない場合には、カラーコーディネートで「似合わせ」を行って着こなせるようにアドバイスしていくのです。ファッションセラピーにおけるカラー診断では、常に似合うことと心理的効果の合計点が最大値になるように組み立てて行くんです。

コーディネート提案では、クライアントの顔立ちや体型に似合うかどうかだけでなく、パーソナリティや生活スタイルも考慮します。服装心理診断で内向的だと判明した人には自己表現を助けるファッションを、外向的な人にはその個性を引き立てるスタイルを提案するなど、個々の特性に合わせたアプローチを行います。

ワードローブ整理も重要なプロセスです。クライアントの持っている服を一緒に見直すことで、その人の好みや価値観、過去の自分との向き合い方などが明らかになります。

心理カウンセリングではその人のこれまでを振り返ることも重要なプロセスですが、クローゼットはその人の歴史を知る手がかりにもなります。また、不要な服を手放すという行為を心理療法として活用することも。古い自分のイメージや執着を手放し、新たな自分を受け入れるセラピーになるんです。

 

ファッションセラピーにはどんな効果がある?

ファッションセラピーは、様々な分野で効果を発揮します。

まず、メンタルヘルスケアの分野では、うつ病や不安障害の患者さんの回復をサポートします。適切な服装選びが自己肯定感を高め、社会との再つながりを促進することで、症状の改善に寄与します。そのため私の元には、うつ病等が原因で休職した後の職場復帰前のクライアントさんが多くいらっしゃいます。

また、キャリア支援の場面でも有効です。就職活動や転職を控えた方に対して、自信を引き出すスタイリングや、志望業界に適したイメージ作りをサポートします。これにより、面接での印象向上だけでなく、自己PRの内容充実にもつながります。この分野では、企業からのご依頼も多くいただいています。

人生の転換期でのサポートも重要な適用分野です。離婚後の再出発や育児からの職場復帰など、新しい道に進むクライアントに、自分らしさを見つける手助けをします。新しい生活に適したワードローブ作りをすることは、クライアントの手間を減らすことになり、それが気持ちの余裕を生み出すことにも。

さらに、独立や起業をしようとしている人にも効果的です。自分らしさを外見に反映させることで、自分のブランド価値を自分でしっかり理解することができるようになりますし、お客様にもアピールできます。

 

ファッションセラピストになるには

ファッションセラピストになるためには、多岐にわたるスキルと知識が必要です。心理学の基礎、カウンセリング技法、ファッション理論、カラー理論などを総合的に学ぶ必要があります。

FPSSでは、ファッション業界の未経験者も、また、心理学の知識が全くない人でもファッションセラピストを目指せるように、これらの要素をまとめて学べるカリキュラムを用意しています。

特に心理学は、正しい知識を得られるスクールを探すのが難しい分野です。その点も、公認心理師で、大学教員でもある私がしっかり指導をしますので、安心して下さい。

ただし、資格取得だけでなく、継続的な学習と実践もとても大切。知識が身についても、実際のクライアントを目の前にするとどうしたらよいのかわからない……というのは非常に良くあること。そこでFPSSでは、講師や先輩方の実際のセラピーやカウンセリングに立ち会えるアシスタント制度や、スーパービジョン(自分が担当しているケースについて、講師にアドバイスをもらうこと)制度も提供。

卒業後も最新の情報とスキルアップの機会を提供し、生涯にわたるキャリア支援を行っています。

 

ファッションセラピストとしてのキャリア・将来性は?

ファッションセラピストとしてのキャリアには、多様な可能性があります。

独立開業してマンツーマンのサービスを行うことはもちろん、既存の心理カウンセリングやイメージコンサルティング業務に新たな価値を付加することもできます。

また、企業研修や組織開発の分野でも、従業員のウェルビーイング向上やチームビルディングにファッションセラピーを活用する需要が高まっています。弊社にもこうした依頼が急増しているのですが人手が足らず追いついていないほどで、弊社の案件を卒業生さんに担当してもらっているのが現状です。

個人から組織まで幅広いフィールドで活躍できるのが、ファッションセラピストという職業の魅力です。

また、AIに取って変わられにくいという点でも、これから目指す価値がある職業と言えるでしょう。

そして何より、ファッションセラピストとはとてもやりがいのある仕事です。単に外見を変えるだけではなく、1人1人に寄り添って心の深い部分からの変化を一緒に体験できるからです。

これから一生かけてやっていける仕事を探している人には、自信をもってお薦めできる、ファッションセラピーの仕事。ぜひFPSSでその一歩を踏み出してみて下さい。少人数制で、しっかりと指導します。

 

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執筆者プロフィール

久野 梨沙
久野 梨沙for*styleパーソナルスタイリストスクール代表
株式会社フォースタイル 代表取締役社長/一般社団法日本服装心理学協会 代表理事/跡見学園女子大学 兼任講師/公認心理師

服装心理学®に基づくパーソナルスタイリングの第⼀人者。大学で心理学を研究した後、大手アパレルメーカーの企画職を経てスタイリストに。社団法人日本服装心理学協会の代表として、装いが人の心に与える影響を研究する「服装心理学®」の啓蒙活動にも尽力。自己肯定感を高めるファッションカウンセリングや、服装を用いた印象コントロールに定評がある。著書に「最高にしっくり似合う服選び」(学研プラス)など。
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